Kyushu University / Hata Laboratory

電子線トモグラフィーによる結晶性材料の3Dイメージング

透過型の電子顕微鏡TEM・STEMによる3Dイメージング法の一つである電子線トモグラフィーは、TEM・STEM観察における二次元投影(重なり)の問題を解決する手法として知られています。 当研究室では、鉄をはじめとする強磁性体を含む結晶性材料中の転位・界面・析出物などを 三次元的に可視化し、材料変形や組織形成の機構解明を目指しています。

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電子線トモグラフィーにより可視化した鉄鋼材料中の転位(線状格子欠陥)の3D画像を、3Dプリンタでガラスに印刷したもの。

九州大学光原昌寿博士ならびに株式会社メルビルの協力による

鉄鋼材料中の転位を立体的に可視化した例

Ultramicroscopy (2017)など

3Dイメージング+電子顕微鏡内その場観察

加熱・変形などの外場下で材料組織が変化する様子を直接観察し、更には電子線トモグラフィーと組み合わせることでナノ構造の動的挙動を立体的に可視化することに取り組んでいます。 また、これを実現するためのホルダーや再構築法の開発、深層学習などのAIの活用にも組んでいます。

最近の応用研究として、ナノ粒子の焼結過程を立体的かつその場で可視化し、フェーズフィールドモデリングとのデータ同化を行う試みを共同研究として実施しています(Acta Materialia 2024など)。

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Pb-Sn合金の変形挙動を立体的かつリアルタイムで可視化した例

Microscopy (2017)など

(上図)変形途中のCu合金から連続傾斜像を取得する様子 (下図)得られた連続傾斜像に対し深層学習を適用し、三次元再構成を行った結果

Materials Characterization (2025)、Scientific Report (2021)など

STEM自動結晶方位マッピング

STEM-ACOM(Automated Crystal Orientation Mapping)とは、TEM内で数nmに絞った電子線を試料上で走査しながら電子回折図形を連続多点収録し、 計算による回折図形データベースとの比較から各測定点での結晶構造と方位を求める手法です。 当研究室では、透過EBSD法などでの解析が容易でないナノスケール多結晶組織を観察対象とし、そのSTEM-ACOM解析に取り組んでいます。

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鉄基超電導薄膜中の結晶配位をナノスケールでマッピングした結果 超電導特性に決定的な影響を及ぼす結晶のc軸配向の度合いを分布と併せて解析することが可能となる。

NPG Asia Mater. (2021)、ISIJ int.(2016)など

原子分解能STEMによる短範囲規則構造の解析

規則-不規則変態とは、複数種の元素からなる結晶固体を構成する原子あるいは空孔が、温度や組成の変化に伴い、結晶格子点上を規則的に並んだり(A-B-A-B-...)ランダムに並んだり(A-A-B-A-...)する現象で、 相分離と並ぶ拡散型相変態の一つです。今ではあまり知られていないかもしれませんが、国内外を問わず、TEMの分野で著名な50歳代以上の研究者の多くは、1900年代に規則ー不規則変態の研究に取り組んでおられます。 例えば、A-B二元合金の場合、AとBどちらか一方の元素の配置が見えれば他方の配置もわかるので、原子分解能観察が難しかった当時のTEMでも原子レベルの構造・組織解析が可能であったと考えられます。

一般に、規則−不規則変態の研究はやり尽くされた感がありますが、状態図に記載されていない準安定規則相や微細な短範囲規則相(以降、ナノクラスタと称します)の存在を示唆するような 材料特性の変化が材料開発の現場では意外と話題に挙がっています(例えば、ハイエントロピー合金やアルミニウム合金、鉄鋼材料など)。 当研究室では、これまで見出されてこなかったナノクラスタについて可視化・解析する手法を探求し、それらと相互作用した転位の性質を解釈することで変形の素過程を理解し、金属材料強度を解釈することに取り組んでいます。 このナノクラスタの構造解析について、インド(2010~)やノルウェー(2022~)の研究グループと継続的に共同研究を行ってきている。

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アルミニウム合金中のナノクラスタを原子スケールで結像・解析した結果。

Mater.Sci.Eng.A(2025)など、ノルウェー科学技術大学・SINTEFとの共同研究(2022年~)

先端的物質・材料のナノ構造解析

材料のナノ構造と一口に言っても、電子顕微鏡で見えるナノ構造は多彩で見所満載です。 そのため、仮にナノ構造のある特徴が見出せたとしても、それが、注目している材料特性を支配する最重要なものである、と結論するのは一般に難しいことです。 電子顕微鏡学者は、単に電子顕微鏡のことを学ぶだけでなく、観察対象とする物質・材料のことを学び、ナノ構造のどこに注目すれば良いのか、 そのナノ構造を明らかにするにはどのような観察・分析手法が必要か、を考えつつ研究を進めることが求められます。 当研究室では、先端的な物質・材料の研究開発を行っている大学・企業・研究所の研究プロジェクトに参画し、実践的なナノ構造解析に取り組むとともに、 必要に応じて新たな観察・分析手法の開発を行っています。

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鉄鋼材料から取得した(a,b)応力ひずみ曲線と加工硬化曲線. (c,d)転位組織のSTEM像. N添加により、プラナー転位列が発現し、加工硬化率が著しく上昇している. (e1-e3)プラナー転位列を構成する欠陥のコア構造の原子分解能STEM像と、同一視野から取得したひずみマップ及び元素マップ. N添加により、欠陥コア周辺の引張ひずみ領域にCrが偏析しており、欠陥コア周辺にN-Crクラスターが形成していることを示唆している.

Sci.Rep(2024)など