研究テーマ

放電/レーザーグループ CLICK to ACCESS

パルスレーザーラマン散乱法による窒化物半導体デバイスの動作特性解析
集積化,大電流化された窒化物半導体の照明/パワーデバイスでは,接合部での温度上昇(歪みの蓄積・緩和)に起因する効率,寿命,安定動作の著しい低下が大きな問題である.従って,動作中のデバイス,特に接合部の温度分布測定を基にしたモジュール全体の動作特性評価と放熱設計が最重要となる.しかしながら,動作中デバイスの温度/歪み計測は非常に困難で,計測技術の確立が切望されている.
本研究では,パルスレーザーラマン散乱(PLRS)法を用いて,動作中の窒化物半導体デバイスの2次元温度/歪み分布計測法の確立を目指している.現在までにレーザー光照射で生じたラマン散乱光を高時間・空間分解分光システムにより検出する2次元分布計測法を開発した.これをLEDモジュールの2D温度分布計測に適用し,動作特性の評価,及び基礎設計指針の提案を行い,また,パワーデバイスのスイッチング時の歪み伝搬特性の評価,デバイスの厚み方向の温度や歪み測定法についての可能性を探索する事を目的としている.
M. Horiuchi, Y. Yamagata, S. Tsutsumi, K. Tomita, Y. Manabe, J. Sci. Technol. Lighting, Vol. 41 (2017) IEIJ160000584(日本照明学会2018年度論文賞)
溶射プロセスにおける分光学的計測手法の開発と最適制御
火力発電のボイラー内壁や橋梁の構造体など,過酷な条件下に晒される設備の耐用年数を大幅に改善する方法として,金属微粒子を鉄鋼等に吹き付けて被膜を形成する技術が高く注目されている.特に,金属を一瞬にして溶融し,高速で吹き付けるプラズマ溶射技術は,高い防錆力と自己修復機能を有する新しい金属コーティング技術であり,特に塩害に対して威力を発揮するため,既に北海油田掘削基地などでも応用されている.しかしながら,溶融,飛翔する粒子の速度や温度,粒径分布など,金属被膜の特性に直接的に影響する溶射粒子パラメータの標準的計測法がないため,本方法の革新的な応用が妨げられている.
本研究では,プラズマ溶射の溶射粒子パラメータや基板表面状態を把握する分光学的計測手法を開発し,パラメータと溶射被膜の特性の相関を明らかにすることを通じて,同法の応用範囲の拡大や品質を向上し,エコロジー社会の構築に寄与することを念頭に研究を行っている.
川口保幸, 宮ア文宏, 山ア正文, 山形幸彦, 小林 希, 村岡克紀,溶射, 第54巻, 第1号, pp. 1-7, 2017.(日本溶射学会2018年度論文賞)
「校正装置および校正方法」川口 他(特許6239660,平成29年11月10日登録)
ナノ材料作成のためのレーザーアブレーションプロセスの可視化
ナノ材料は大きな比表面積に加え,量子サイズ効果の発現により,バルク材料とは著しく異なる特性を示し,特に半導体デバイス分野での応用が期待されている.その有効な作成法の1つであるパルスレーザー堆積(PLD)法は,ターゲットへのレーザー照射によりアブレーション(放出)された原子,分子が自己組織化して基板上に堆積される.特に最近,10nmのプロセスルールに対応可能な低誘電率(low-κ)薄膜作成法として大きく注目されている.しかしながら,PLD法は作成薄膜の酸素欠損や微小な有効面積など,実用化に向けて克服すべき問題点は大きい.
本研究では,レーザー計測法や分光計測法を駆使して,アブレーション原子・分子の反応過程や微粒子の生成過程を可視化する.具体的には,レーザートムソン散乱(LTS)法や発光分光法により電子温度・電子密度,レーザー誘起蛍光(LIF)法により原子・分子密度,レーザーレーリー散乱法により微粒子密度を計測する.それらを通じて,PLD法によるナノ微粒子の生成,輸送メカニズムを解明することを目標とする.
電界印加冷蔵システムによる農産物鮮度維持機構解明への工学的アプローチ
高品質な日本産農産物の海外への大規模輸送や国内でのコールドサプライチェーン構築にため,長期に渡る輸送や保存に耐える鮮度維持方法が探索されている.その一手法として,通常の冷蔵庫内に準静電界を印加して農産物の長期鮮度維持を達成するシステムが注目を集めている.しかしながら,電界印加による農産物の鮮度維持機構は明らかにされておらず,その研究は緒に就いたばかりである.基礎研究には小型の模擬電界貯蔵コンテナが用いられているが,その電気的特性や庫内ガス変化は明らかにされていない.
本研究では,電界印加冷蔵システム内の電界分布や高電圧印加時の庫内の雰囲気ガス変化など,工学的な立場からその特性を明らかにし,さらに農産物を使用した特性評価を通じて,電場印加による鮮度維持の解明に寄与する事を目指している.

電子材料EMDグループ(学内限定) CLICK to ACCESS

ナノ構造複合膜を用いた高性能電子エミッターの開発
電界放出型の電子エミッターを用いた真空微小デバイスは、高効率、省電力、小型化が可能などの潜在的利点を有する。近年は人工衛星用イオンエンジンや真空ダイオードへの搭載が期待されている。一般に高効率な電界放出材料には、トンネル障壁を低減させる低い仕事関数と局所電界を増す鋭利な表面形状が求められる。多層グラフェン構造体の炭素ナノウォール(CNW)は鋭利な表面形状を有するが、密に生成したウォール間で電界遮蔽効果が生じ易いため、CNW本来の優れた電界放出特性が得られないことが課題である。我々のグループではナノ結晶ダイヤモンド(NCD)膜など平坦な膜との複合化により、ウォール間隔を増加させ、電界遮蔽効果を抑制することに成功している。
本研究では、マイクロ波プラズマCVD法を用いて、新たにナノウォール表面を金属ナノ粒子あるいはNCD粒子により修飾したナノ構造複合膜を形成し、電界放出特性を調べる。電界強度分布をシミュレーションにより予測し、高効率な電子エミッターの設計指針を見出すことを目的とする。
ナノウォール/金属ナノ粒子、ナノウォール/NCD粒子の形成に成功し、電界放出性能と安定性の向上を実証した。実験とシミュレーションを通して、局所電界が効率的に増加することを見出した。
Y. Kaneko, K. Terada, K. Teii, Field Emission Characteristics of Metal Nanoparticle-Coated Carbon Nanowalls, Nanotechnology 31, 165203 (2020).
Y. Kaneko, K. Terada, K. Teii, Enhanced Field Emission from Metal-Coated Carbon Nanowalls, Jpn. J. Appl. Phys. 58, 118002 (2019).
ナノ構造体と半導体デバイスを用いた高性能ガスセンサーの開発
水素は二酸化炭素を排出しない持続可能な次世代エネルギーとして期待されているが、可燃性ガスであるため安全に管理することが必要である。今後の水素インフラ・燃料電池車の普及のためには、水素漏洩を検知する高感度・高応答の水素センサのニーズが高まっている。多層グラフェン構造体の炭素ナノウォール(CNW)は大きな表面積を有し、水素等の吸着により電気伝導性が変化するため、電気信号を利用したガスセンサーへの応用が期待されている。
一般に電気信号の検出には、金属電極をCNW表面に形成する必要がある。本研究では、金属−CNW間接合の電気輸送特性を最適化するとともに、半導体デバイスとの複合化によって電気信号を制御することで、高感度・高応答のガスセンサーの設計指針を見出すことを目的とする。
Z. Sun, M. Cho, R. Hijiya, L. Huang, K. Teii, Electrical Characterization of Metal Contacts to Nitrogen-Incorporated Nanowall Structures, International Thin Films Conference (TACT) (2021).
ナノ粒子シーディングのための化学表面処理法の探索と応用
ナノ結晶ダイヤモンド (NCD) 膜は、アモルファス炭素にダイヤモンドナノ粒子が分散したナノ構造複合膜であり、低い摩擦係数、高い生体親和性、高い光吸収係数、高い電気伝導性など、単結晶ダイヤモンドよりも優れた諸特性を示す。バンドギャップが大きいため、高温環境下や放射線が降り注ぐ宇宙空間での半導体応用も期待されている。Siなどの異種基板上にプラズマCVD法を用いてNCD膜を堆積させるには、一般にダイヤモンドナノ粒子を用いたシーディング / スクラッチなどの堆積前処理が必要である。広く用いられている超音波振動によるシーディング / スクラッチ処理では、得られるNCD膜の均一性が低いことが課題であった。
本研究では、NCD膜の均一性向上を目的とし、シーディング / スクラッチ処理前に化学物質を含む混合溶液中で基板表面処理を行い、得られたNCD膜の表面形態、構造、電気伝導特性等について評価を行った。
化学混合溶液中で基板表面処理を行い、ダイヤモンド粒子と基板に異なる符号のゼータ電位を持たせることで、基板上に粒子を一様に分散させることに成功した。本手法を用いることで、従来法に比べ、NCD膜のn型伝導性の向上と表面粗さの低減に成功した。また優れた電界放出特性を示すNCDと炭素ナノウォールから成るナノ構造体の形成にも成功した。
泥谷, 黄, 堤井, 均一なナノダイヤモンド膜形成のための基板への堆積前処理, 日本セラミックス協会2021年年会
高温誘電体・キャパシタ―の研究
パワーエレクトロニクス分野において、高温環境下でも安定動作が可能なコンデンサ用誘電体材料が求められている。しかし現行のコンデンサは200 ℃以上で容量や絶縁性が低下するため、高温環境に対応できない。六方晶窒化ホウ素(h-BN)は約6 eVのワイドバンドギャップ、高絶縁性、高温耐酸化性などの優れた諸特性を有する物質である。
本研究では、表面波プラズマCVD法を用い、低エネルギーイオン衝撃下でイオン照射エネルギーを制御することによって高密度なh-BN膜を形成し、その構造制御と電気特性評価を通して、高温用誘電体材料としての応用可能性を検証することを目的とする。
イオン注入のしきい値より少し高いイオン照射エネルギーにおいて、最もsp2構造の結晶性と規則性が向上することを見出した。またsp2結合の結晶性等が高いほど絶縁性(抵抗率)が増加すること、その際150 ℃以上の高温でも絶縁性が比較的維持されることが分かった。
Y. Kamimura, M. Torigoe, K. Teii, S. Matsumoto, Electrical Insulation Characteristics of Metal-Insulator-Metal Structures Using Boron Nitride Dielectric Films Deposited with Low-Energy Ion Impact, Mater. Sci. Semicond. Process. 121, 105353 (2021).
Y. Kamimura, T. Matsuura, K. Teii, S. Matsumoto, Effect of the Boron-to-Nitrogen Ratio on Leakage Current Characteristics of Boron Nitride Films Prepared by Surface-Wave Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition, Thin Solid Films 706, 138029 (2020).
バイオ機能材料・デバイスの開発
医療および補綴用人体インプラントの表面は、耐摩耗性のみならず、生体物質に対する耐性と生体細胞への親和性が同時に求められる。
本研究では、独自の低エネルギーイオン衝撃下でのプラズマCVD法によって、高品質な立方晶窒化ホウ素(c-BN)膜を形成し、その表面状態を制御することで、生体親和性に優れた超硬質バイオ機能材料・デバイスへの応用を目指す。
プラズマ表面処理によってc-BN膜表面は親水化し、優れた生体親和性を示すことを実証した。
J. H. C. Yang, K. Teii, C.-C. Chang, S. Matsumoto, M. Rafailovich, Biocompatible Cubic Boron Nitride: A Noncytotoxic Ultrahard Material, Adv. Funct. Mater. 31, 2005066 (2021).

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