九州大学 総合理工学研究院
複雑系社会環境科学・サステナブル居住環境学・都市環境科学 研究室
九州大学 総合理工学研究院
複雑系社会環境科学研究室&都市環境科学研究室
都市域には特有の気象現象がある事は古くから知られてきました。日本でここ数年来急速に認知度を増している「ヒートアイランド現象」もその一つです。都市に多くの人が暮らし、エネルギーを消費している現状を考えると、人間の快適性や安全性、地球環境問題の観点から「都市気候」は重要な研究の対象の一つと言えましょう。
この研究分野は学際的な色彩が強く、気象学、土木工学、水文学、建築工学、機械工学など様々な分野の研究者が集まっています。また、研究のターゲットも、よりきめ細かな天気予報の確立、エネルギー消費量やCO2排出量の問題をクリアするための都市・建築デザイン、汚染物質飛散の予測向上など、様々です。
この都市気候学の分野において、我々の研究室は次の2つの方向から研究に取り組んでいます。
0.6 : 2.4
この2つの数字は、過去100年間における地球の平均気温と大都市の気温(℃)の上昇率を示しています。つまり、地球温暖化の4倍のスピードで都市は高温化しているという事になります。このような都心部が郊外に比べ気温が高くなる現象を、ヒートアイランド現象と呼びます。公共事業見直し、「都市再生」などの社会動向とリンクするように、ここ数年でヒートアイランド現象は国内では一気に知名度を増しました。
ヒートアイランドの原因を考える上で、都市の温度場の形成要因として次の2点が重要です
土地被覆
人工排熱量
これらの因子の働きは非常に複雑で、「緑地○%増加すれば気温が○度下がる」といった平易な記述で現象を語ることは困難です。
そこで本研究室では、都市の温度場形成のメカニズムを都市気候モデルにより記述し、様々な条件での数値実験を行う事で、ヒートアイランド緩和策の有効性について検討してきました。また、都市気候モデルに含まれている多くの未解明の現象を解明すべく、観測や室内実験を行っています。
風洞模型実験による都市の気流場における抵抗係数のモデリング
塩分法を用いた都市表面-大気の交換係数に関する風洞模型実験
都市域の気温は、都市の表面(アスファルト、建物など)と都市キャノピー空気の間の対流による熱交換、都市キャノピー空間の内外での大気の流動による熱輸送に大きな影響を受けています。しかし、複雑な形状を有する都市の表面と大気の熱伝達効率については、これまで十分な実験データの蓄積がありませんでした。
そこで、「塩分法」とよばれる手法を用いて、様々な幾何形状のブロック粗度群の床面の蒸発量の計測を行ってきました。実験データは「バルクスカラー係数」で整理されます。このバルク係数は、運動量輸送における抗力係数に相当するものです。
1/5スケールモデルサイトにおける温度場・気流場の観測
集合住宅団地の熱収支観測
(実大2次元キャノピーにおける対流熱伝達率分布測定)
Large eddy simulationによる都市キャノピー空間の気流場・濃度場の解析
都市の人工排熱発生量・水使用量の時変動のモデル化
(実大2次元キャノピーにおける対流熱伝達率分布測定)