主な研究内容

低分子の標的RNAモチーフを網羅的に探索する手法の開発

RNAが次世代の創薬標的として注目されていますが、RNAを標的とした低分子創薬研究は殆ど進んでいません。なぜなら、低分子が特定のRNAに結合する例、すなわち、低分子―RNAのペアの具体例が少なく、特定のRNAに結合できるような化合物のデザイン指針が不足しているからです。これらの課題はRNAを標的とする低分子開発のボトルネックとなっています。 私たちの研究室では、低分子化合物‒RNAペアを網羅的に探索する手法を開発し、低分子化合物‒RNAペアのビッグデータを情報科学的に解析することで、RNA標的薬の最適分子デザイン指針を獲得することを目指しています。

● 翻訳フレームシフトを操る低分子

COVID-19の原因ウイルスであるSARS-CoV-2ウイルスをはじめとして、多くのRNAウイルスは、翻訳フレームシフトという機構を利用して、自身のタンパク質を合成しています。ウイルスゲノムには、複数のタンパク質の読み枠がオーバーラップしている領域があります。その領域には、7塩基からなる滑り配列と、ヘアピンやシュードノットなどの特徴的な2次構造が存在しています。リボソームは通常、mRNAを走査しながらタンパク質を合成しますが、この2次構造部分で一時停止し、その間に滑り配列上で1塩基分後退します。その後翻訳を再開することにより、下流のタンパク質が翻訳されます。私たちの研究室では、翻訳フレームシフトの制御を目指した低分子開発、化合物スクリーニングを行っています。

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● miRNAの成熟過程を標的とする低分子

miRNA(マイクロRNA)は、19〜25塩基の短いRNAで、ヘアピン構造をもつpre-miRNAという前駆体がDicerという酵素により切断されて生成します。miRNAは相補的な塩基配列を持つmRNAに結合し、その翻訳を抑制することにより、種々の生物学的プロセスの調節に関わっているとされています。私たちの研究室では、pre-miRNAの立体構造を標的とする低分子を用いて、pre-miRNAからmiRNAへのプロセシング(成熟過程)を調節することを目指しています。

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